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デザインのお話

空間デザインについて。 | いろいろ

空間デザインについて。

ノートパソコンの写真を整理していたら、家具メーカー勤務時代に一軒だけ設計させていただいたレストランの竣工写真がでてきて、なつかしさもあり少しご紹介させていただきます。 お店がオープンしたのがたしか2010年の10月頃だったから、もう10年以上も前のお話です。 当時も今と変わらず、とてもシンプルな空間が好きで、このレストランも、なるべく装飾的な要素を削ぎ落としながら、シンプルに、素材感を大切にして、何回通っても飽きのこないような空間を目指してデザインした記憶があります。 まず、お店の顔であるL型のオープンキッチンは、ウォールナット天板とコンクリートブロックを使って、素材感を前面に打ち出したデザインに。 カウンター席をこのお店で大切な場所にしたかったので、床をメイン通路と段差を設けてフローリング貼りにして、ライン照明を使ってステージみたいに演出しました。 段差部分に手すりを設けるか悩みましたが、なるべく空間のボリュームを大きくとりたかったので、フローリング面積を少し広めにとって安全面を確保し、手すりは無しにしました。ただ、今思い返すと、手すりがあったほうがカウンター席に座った時に囲われた感がでるので、厚みの薄いフラットバーで作っても良かったかもしれません。 次に、お店の奥に進むと、カウンター席と雰囲気を大きく変えたテーブル席ゾーンになります。 女性がメインターゲットのお店だったので、フェミニンとモダンのちょうどいいバランスを目差して、ダークパープルのカーペットにライトグリーンの壁面をチョイス。木フレームの大型ミラーに、ペンダントランプが写り込む感じがとても好きでした。ちなみに、左側の木製パーテーションを通り抜けると、トイレエリアになります。 エントランスに戻って、入口エレベーター横の個室は、Osborne&Littleのクラシックなアクセントクロスの壁面を中心に、ベンチシート後方に仕込んだ間接照明で陰影をつけて、少しラグジュアリーな雰囲気を狙っています。 また、天井照明を一切なくして、高低差をつけた3種のペンダントランプとフロアスタンドだけで明るさを確保。 ベンチシートに限らず、アッパーの間接照明は、あらゆる壁面を効果的に演出できるので、住宅でもディスプレイ棚やTVボードに仕込んだり、いろいろ使えると思います。 照明計画は、さきほどの個室のように、できるだけスポットライトやダウンライトを使わずに、ペンダントランプを多用しています。目線より上にもアクセントをつけることで、空間全体の密度をあげるのが狙いです。 店舗設計は、オーナーの意向はもちろんのこと、近隣との調整から始まり、テナント側との交渉、厨房設備業者とのすり合わせ、設備スペックの計算など、デザイン以外にやるべきことがたくさんあって、とても多くの専門知識とコミュニケーション能力が求められます。また、工事が始まれば、図面通りに進むことなどほとんど無くて、予期せぬ問題が起きるたびに、監督や職人のみんなと頭をひねりながらその都度解決策を見出していきます。現場では、問題解決能力がすごく求められます。 なかなかハードな仕事ですが、完成した空間に身を置いた瞬間、何とも表現しがたい達成感に包まれて、きっと住宅設計も含めて、空間をデザインする人たちは多かれ少なかれ、この達成感を求めて仕事をしているんじゃないかなって感じます。 このお店以来、しばらく空間デザインから離れてしまっていますが、またいつかご縁があったら、ぜひ空間デザインにも取り組んでみたいと思います。

真似できないセンス。 | いろいろ

真似できないセンス。

  新宿伊勢丹の1Fイベントスペースで開催されていた、建築家の長坂常さん率いるスキーマ建築計画×Casa BRUTUSによるBANG&OLUFSENのポップアップストア。 日本の伝統建築技術である「木組み」で構成されたステージに、ヨーロッパの最先端デザインプロダクトが点在した空間は、まさに長坂さんの世界観。 長坂さんが手がける空間には、「ブルーボトルコーヒー」などでも見られるように、独特の「余白」があって、それがあの心地よさを生み出しているのではないか、と勝手に想像したりして。。 デザインしすぎない。というと少し語弊があるかもしれませんが、「変える=魅せる」部分と「残す=引き立てる」部分のバランスが絶妙で、これが「真似できない、オリジナルのセンス」というものなのかなって思います。  

グレー+ホワイト+ベージュ。 | いろいろ

グレー+ホワイト+ベージュ。

  モルタルとスタイロフォームと木。 先日打合せでお伺いしました新築現場で、床暖房の断熱用として施工されていたものです。 写真ではあまり伝わらなくて申し訳ないのですが、なんだかとてもキレイで心地良かったんです。   グレー+ホワイト+ベージュの組み合わせは、個人的に流行り廃りのない王道のカラーコーディネートだと思っています。 ポイントは、グレーとベージュは塗装ではなく、素材本来の色を用いることです。 たとえば、グレーならモルタル(コンクリート)や天然石とか。ベージュは木や土あたり。 素材本来の色は、塗装と異なり、濃淡が混じり合った深い表情を持っているので、面積が広くなるほどとても奥の深い雰囲気になります。 そして、グレーとベージュ、二つの素材をニュートラル色であるホワイトが引き立たせる。   すごく簡単な組み合わせですが、これだけでそれなりにおしゃれな空間になります。 実際、繁華街やショッピングセンターを歩くと、必ず一軒はこの組み合わせのインテリアを見かける気がします。あとはギャラリーとか。 この組み合わせに、植栽のグリーンと電球色のペンダントランプがあれば、ほぼ間違いなくおしゃれで心地よい空間になると思います。   もしかしたらぼくの好みだけかもしれませんが、、住宅のインテリアにもオススメです。  

「新しい意味」と「情緒的価値」。 | いろいろ

「新しい意味」と「情緒的価値」。

  先日、木工作家の友人と一緒にエントリーした秋の小物展示会の審査結果が出て、残念ながら書類選考で落選してしまいました。 それで、昨晩は三軒茶屋にあるお気に入りの居酒屋「マルコ」で反省会。 お互いあきらめの悪い人間なので、「ダメだったけど、良い経験になったね。」なんて一度きりの思い出として丸く収めるつもりは毛頭なく、きちんと落胆して自信を無くし、前に進むための言い訳を並べて慰め合い、次回でのリベンジを誓いました。 ただ、今回の挑戦で再確認したことがあります。 それは、"「役にたつ」だけでは、もう通用しない時代になる"ということ。 高品質で高機能といった、いままで日本のメーカーが得意としてきた「役に立つ」強みは、スマホひとつで世界中の製品が簡単に比較できて手に入るいま、決して珍しいものではなくなりました。 実際に、10年前はさんざん酷評されていた中国製品も、いまではかなり高品質になってきています。 それでいて、日本のメーカーに比べて価格がとても安い。 同じような品質と機能であれば、当然少しでも安い方を選ぶと思います。 では、これから先に求められるものは何かというと、それは「新しい意味」です。 例えば、ろうそく。 電球が生まれる前までは「明るくするための道具」でしたが、今は「暗くするための道具」として活躍しています。 電気を消してろうそくの光だけで部屋を照らすことで、落ち着いた雰囲気を楽しむことができるんですね。 電球ができて以降ろうそく産業が衰退しているかと思いきや、じつは今どんどん伸びているのです。 ただ、プレイヤーは入れ替わっていて、当初の「明るくするための道具」としてろうそくを作っていた老舗メーカーは淘汰され、新たに「暗くするための道具」という意味を持たせたベンチャーが急成長を遂げています。 ろうそくとしての性能は全く変わっていないのに、意味を変えることで、新たな価値が生まれたのです。 このことを「意味のイノベージョン」といいます。 あたかも自分が考えたかのように書いていますが、もちろんそんなことはなく、最近のデザイン界隈で注目されている、イタリア発の新しい考え方です。 むずかしい言葉でいうと、「デザイン・ドリブン・イノベーション」といいます。 この考え方の面白いところは、「新しい意味」は発明するものではなく、「いつもぼくたちの目の前にある」という点なんです。 「暗くするためのろうそく」は、「家で過ごす時間を楽しむ」という日常の中から見出された、新しい意味です。 ぼくたちの日常には新しい意味のヒントがたくさん隠れていて、いかに気付くことができるかがポイントです。   もうひとつ。 「情緒」という感覚に、ずっと興味があります。 小物も、洋服も、家具も、キッチンも、車も、みんな「役に立つ」だけでいいなら一番身近で安く手に入るモノを選ぶと思うんですね。 実際、自分も特にこだわりはないけど必要なモノは、なるべく近場で安く手に入れたいと思ってしまいます。 でも、量販品の何倍ものお金を出してブランド製品を買ったり、ほぼ同じ性能なのに国産車の倍ぐらい高価な輸入車を選んだり、既製品より高価でしかも購入するまでに時間のかかるオーダー家具やオーダーキッチンを選ぶ人って、「役に立つ」だけが価値基準ではなく、きっと「心が満たされること」を求めているでのはないかと思うのです。 では、何が「心を満たしてくれる」のかというと、それが「情緒的価値」なのかなって思います。 ちょっと例えが的外れかもしれませんが、大切な人から貰ったモノって、価格や希少性に関係なく、なんでも嬉しいし、とても大切にするじゃないですか。 これってまさに「情緒的価値」だと思うのです。 情緒的価値はとてもパーソナルなもので、それがつまりその人にとっての「新しい意味」でもあるのかなって。   「新しい意味」と「情緒的価値」。 これからもっと深く掘り下げていきたいと思います。  

見た目の美しさ、機能性。 | オーダー家具

見た目の美しさ、機能性。

  BasisのオーダーTVボードは、基本的にルーバー扉を中心にデザインしています。 ルーバーとは、細長い部材を縦方向や横方向に平行に並べたもの呼び名で、家具をはじめ、建築全般で良く使われています。 住宅だと、よくバルコニーのフェンスやエアコンを隠すパネルで目にすることが多いと思います。 それで、このルーバーは見た目の美しさと機能性を兼ね備えた、とても優れものなんですね。 細長い部材が規則的に並ぶ姿は、どことなく繊細で、日本的な美意識を感じます。 また、視線をほどよく遮ながら通気性も確保できるので、熱を発するAV機器を収納するTVボードの扉にもってこいなのです。 ただ、ルーバー扉には弱点もありまして、ルーバーが苦手な方が一番気になるのは、おそらく扉の中にホコリが入ることだと思います。 たしかに、ガラスなどで閉じている扉に比べたら、ホコリは入ってきます。 とはいっても、経験上、フルオープンほどこまめな掃除が必要ってほどではありません。 週に1回、さっと乾拭きする程度で十分キレイになります。 また、TVボードだけでなく、例えば湿気のたまりやすい洗面カウンターの扉にも、ルーバー扉はとてもオススメです。 *以前製作したことがあるのですが、うっかり写真を撮るのを忘れてしまいました。。 ルーバーをはじめ、「見た目の美しさ」と「機能性」を兼ね備えたデザインは、とても理に適っていて、おそらく流行り廃りの激しい世界からとても遠く離れた、とても静かで穏やかな世界にあると思います。 ぼくたちがデザインする家具やキッチンも、そんな世界の住人になれるよう、これからも努力していきます。    

シンプルなデザインについての考察。 | Basisについて

シンプルなデザインについての考察。

  なんか、久しぶりに独り言みたいなブログを書いてみたいと思います。 シンプルなデザインについてです。   Basisのオーダー家具やオーダーキッチンは、永く使い続けていく中で飽きがこないように、できるだけシンプルなデザインになるように心がけています。 シンプルなデザインは、基本的に装飾をそぎ落とす作業なので、見た目の特徴が少ない分、おのずとどれも同じような雰囲気になっていきます。 例えば、世の中にあるシンプルなデザインのオーダーキッチンを並べてみて、「これはBasisのオーダーキッチンだね」って一目で分かることは、かなり厳しいと思います。 いろいろなメーカーと比べてどうありたい、ということではなく、単純に、「Basisらしさって何だろう」という問いです。 寝る前に、時々スマホで海外のデザインを紹介するサイトを見るのですが、シンプルなデザインの中にも、何か「らしさ」みたいなモノが感じることが時々あって、その正体は何なのか、色々仮説を立てながら考察しています。   直方体の組み合わせ オーダー家具やオーダーキッチンを因数分解すると、例外もありますが、基本的に天板や扉など「直方体」の集合体になります。 直方体はタテとヨコとタカサのバランスが変わると、見た目の印象はとても変わります。それがプロポーションです。 また、同じプロポーションの直方体でも、木とステンレスなど素材によって印象はずいぶん異なります。 そう考えると、直方体の組み合わせの数だけデザインがあって、素材も組み合わせると、その数はほぼ無数になると思います。   隠れたディテール ぼくは全然ファッションに詳しくないし、オシャレでもありませんが、なんとなくいいなって感じる洋服やカバンなどに共通するのは、見た目はシンプルだけど、たとえば生地がすごく素敵だったり、着た時にすごく体に馴染む感じだったり、ステッチがキレイだったり、裏地もすごくこだわっていたり、などなど。シンプルなデザインの中にたくさんの工夫がなされています。 つまり、ディテールをとことん突き詰めた結果、ただのシンプルだけではない、とても深みのある製品が生まれるのではないかと思っています。 そう考えると、おそらくBasisが目指すシンプルは、次の方程式で表せそうです。   Basisの目指すシンプル=プロポーション×素材×ディテール   なんだかとりとめのない文章になってしまいましたが、この仮説をもとに、「Basisらしいシンプルなデザイン」をもっともっと探していきたいと思います。  

ボリュームと、ソリッド。 | Basisについて

ボリュームと、ソリッド。

ボリュームと、ソリッド。 ぼくがオーダー家具やオーダーキッチンをデザインする上で、指針となるテーマの一つです。 一般的には、という言い方が正しいかは別として… カッコよく見せたい時は、「薄く、軽やかに、そしてシャープに」デザインすることがセオリーみたいに感じることがよくあります。 たしかに、天板の厚みが薄く、細く軽快な脚と組み合わせたシャープなデザインのダイニングテーブルは洗練されていてとてもキレイなんだけど、生活の道具として見ると、どうしても気後れしてしまう。 何故なら、シャープなデザインの製品は繊細なバランスなので、心理的な影響でどうしても慎重に取り扱いたくなるんです。モデルルームやゲストハウスのように日常使いではなく、イメージ作りが目的ならそれでも全然OK。 でも、自宅に置く家具やキッチンは毎日欠かさず使うものだから、臆せずもっと気軽に使って欲しい。 そんな理由で、ある程度まとまったボリューム感があった方が心理的な影響が軽減されて、安心して永く使い続けてもらえるのではないかなって思います。     例えば、このBasisオリジナルダイニングテーブル。 デザインコンセプトは、 「ずっと、ずっと、飽きずに永く使い続けたくなるダイニングテーブル。」 少し話は逸れますが、ダイニングルームの主役は何と言っても椅子だと思います。 椅子は、家具の中で一番デザインが難しく、そして世に出ている数が圧倒的に多い製品です。 特に50年代から60年代にデザインされて、今もなお現役で製作され続けている名作椅子には、時の洗礼を受けてきたからこそ生まれる、普遍的な美しさがあります。 だからこそ、様々な名作椅子たちと組み合わせても違和感がなく、椅子の魅力を最大限引き立たせながら寄り添うダイニングテーブルを作りたかったんです。   デザインテーマは「シンプル、ソリッド、プロポーション」 目指したのは、安定感のある佇まい。 「38mm厚の天板」と「80mm角の脚」、2つのソリッドな要素がダイレクトに伝わるように、フォルムは天板と4本脚のシンプルな構成。 あとは幕板(天板の下にある部材)の厚みを全体のバランスを見ながら慎重に決めて、安定感のある佇まいになるよう、プロポーションを整えました。 決して派手さはないけど、使い込めば使い込むほど愛着が感じられるダイニングテーブルです。 ボリュームと、ソリッド。 Basisが得意とするシンプルなデザインに奥行きと深みが生まれるように、これからも丁寧に向き合っていきたいテーマです。

素晴らしいデザイン | プライベート

素晴らしいデザイン

  10月3日水曜日。天気は曇り。 休みを利用して、ずっと行きたかった「デザインあ展」に家族みんなで行ってきました。 10月1日の展覧会公式ツイッターによると、1日は月曜日だというのに午後4時ぐらいには入場整理券の配布が終了しましたとのこと。午後には別の用事もあるし、これは頑張って朝一番で行かねば、とせっせと身支度をして予定通り出発するも、行きの首都高でまさかの進路ミスにより、都心をわざわざ大回りするハメに。 朝から超険悪な車内に、ただひたすら「みんなホントにごめん。。」とつぶやくのが精一杯。 こんな時、窓から見える真新しい景色たちに長男からの矢継ぎ早の質問が、ダメダメなお父さんを救ってくれます。   「デザインあ」は、言わずと知れたEテレの人気番組。 ぼくと子供たちもにとっても、「ピタゴラスイッチ」と並んで毎週欠かさず見ている大好きな番組です。 なんとなくだけど、「ピタゴラスイッチ」はとても深いテーマをとてもやさしく表現していて、「デザインあ」は、とてもシンプルなテーマをとても斬新に表現しているイメージ。 大人から見ても斬新なので、子供にとっては斬新を超えてちょっと恐怖を感じるらしく、四方をスクリーンに囲まれた真っ暗な部屋で「デザインあ」のテーマ曲や「解散!」といったおなじみの映像が流れるように映し出されると、「もう次いこうよ。。泣」と半べそかきながらせかす長男。 もしかしたら、単純に部屋が真っ暗で怖かっただけなのかもしれない。   展覧会を体験して改めて感じたことは、 「本当に素晴らしいデザインは、頭の理解を超えて心を動かされる」 ということ。   子供たちには、これからもたくさんの「素晴らしいデザイン」を見せてあげたい。   「デザインあ展」 〜10月18日(木)まで https://www.design-ah-exhibition.jp

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